Likelihood

NOLSでは、見渡す限りの青空の下で、リスクマネージメントの授業も行われる。そう、ここは、アウトドア学校であると同時に、リーダー養成学校でもあるのだ。山を登る、とか、嵐に遭う、とか、原野で生きるとか、机上でなく、生の体験からこそ、身につくことはある、という。


判断を間違えれば、それは同時に、「崖から落ちてビバークする」「びしょ濡れになる」「眠れない」「体調不良になる」「怪我をする」と、自分が不快・危険な目にあうことを意味するから、イヤでも真剣にならざるを得ないのだ。


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物事へのリスクは、上の4つの枠で捉える。

likelihood = 可能性

consequence = 困る結果 


たとえば、

HIGH L X LOW C ... 天気の悪化

LOW L X LOW C .... 足首の高さまでしかない川で溺れる

HIGH L X HIGH C ...夏の山の中で低体温症になる

LOW L X HIGH C ... 熊に襲われる



もう少し詳しい例を挙げると


「あんまり起こらないとは思うけど(LOW L)、もしそれが起こったら、超やばい事態だ(HIGH C)」というのに、


「添乗で海外にいくときに、パスポートを忘れて成田に向かう」というのがある。うぅぅ。考えただるだけでも肝が冷える。


以前いた旅行会社では、でも、それは可能性ゼロではないから、と、対策を取っていた。見送りヘルプ社員は、必ずパスポート持参で、空港に行くのだ。そして実際、同僚は、先輩添乗員の代わりに、1泊3日で、カナダに向かったことがある。着の身着のまま。



そう、肝が冷えるリスクは、減らしていかないといけなくて、減らすには、以下の4つの方法がある。


a) avoid... 回避する(常に4人行動で声を出し、熊を近づけない)

b) mitigate... 緩和する (岩場は、落石を避けるためにヘルメットを被る)

c) retain.... そのままやりつづける 

d) transfer... 委譲する (難しいデナリに登るので技術あるガイドを雇う)




昼間のハイキングだけど、日が暮れても困らないよう、一応ヘッドランプ(と、正しいサイズの換えの電池)を持って行く、とか、


毎日続く忘年会、二日酔いを緩和するために、予め牛乳飲んでから参加する、とか、


朝5時起きしてでかける仕事は、「寝坊」を a) avoid するために、目覚まし5個かける、とか、いや、いっそ寝ずにいる、とか。 いや、b)mitigate で、4時半に起きて、1本早い電車に乗る、電車が少しくらい遅れても、集合時間に間に合うように、とか。


まあ普段から、意識せずとも、皆やっていることなのだけれど。



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なんで、こんな話が出てくるか、というと、自分の失敗談を書きとめておきたいからだ。

戒め戒め。


先週、スライドショーのために、googleのプレゼンテーション・ツールを使って、プレゼン資料(写真100枚なので重たい。googleのサーバに保存されている)を用意した。家の最新パソコンと高速ネット環境では、何の問題もなく、作れた資料だ。


まさか、そのファイルが、当日、開いてくれないリスクがあろうとは・・・、作っているときに、一瞬だけ考えたけど、コンピュータの苦手意識と、LOW-L (きっとおこらないだろう)を信じて・・・、面倒くさがっただけ、なのだけれど・・・、そのまま、何の対策も取らずに当日を迎えてしまった。


で、案の定、会場で開けないその資料。サイズが重すぎて、すぐにパソコンが固まってしまう。書面に原稿を落としておく、とか、他のメディアにコピーを落としてもってくる、というリスクマネージメントをしなかった私は、目の前で固まりつづけるパソコンに、自分の頭も、フリーズだ。



ふーむ、写真なしで、話だけで2時間語るのか・・・と、覚悟を決めた瞬間に、まさかの天使が現れ、その状況を救ってくれた。無事復活した資料で、Leave No Traceの話を、来てくださった19名の方々にすることができたのだけれど、


正直、3日くらい、寿命が縮まった。


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来年の課題: 好ましくない事態の発生に慌てない。理想の「オプションA」がうまくいかないこともある。「オプションB」「オプションC」を考えておくこと!