「ノースウッズはあまりに広く、ひとつしかない肉体と、人生という限られた時間について考えると、しばらく途方にくれてしまいます。」


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9月、ユーコンの川下りに行ったとき、お客さんのよっちゃんが、一冊の本を鞄に忍ばせてきてくれた。「bettyはこの本好きだと思って」と、渡されたその本。まあ、よく日本からこんな場所までやってきてくれたねぇ、と、何だか嬉しく、早速ユーコンの川の音を聞きながら、アスペンの木漏れ日を暖かく背中に受けながら、ゆっくりと、ページをめくった。


小学生向けに平易に書かれたその写真絵本は、

キースにどこか面影が似た白髭の男性が、春、湖を、カヌーで旅する物語、で。


手作りの使い込まれたパドルや、古い形のテントやバックパック、ちょっと頑固そうな男性の横顔、苔むした森にひっそり落ちているカリブの角・・・、


どのページをめくってもめくっても、はぁ、とため息ついてしまうような広がりのある写真ばかりで、まあ、それを読んでいた、ユーコン川ほとり、という、絶好の環境も手伝って、私はどっぷりと、その世界に入り込んでしまったのだ。瞬間、仕事も忘れて、時間も忘れるくらいに。


北の大地を書いた本、北の大地を写した写真集は、星野道夫はじめ、数多く見てきたけれど、今までのどれよりも、惹かれる視点で見ていて、そして編み上げた作品だった。


作者の、大竹英洋 、という名前は初耳だったが、プロフィールを見ていたら、3つ違いの大学の後輩だ、ってことも手伝ってより親しみを覚え、その名前を、手帳に書き留めておき、日本に戻ってから、感想を送った。




そうしたら、この秋、久々に日本に戻ってき写真展を開くのだ、と、BCCで受け取ったメールに書いてあった。どんな方かもしらないし、会ったこともないのだけれど、なんだか、そのメールにあった、「限られた時間に途方にくれる」というその一文にカッツーンとやられてしまったので、直感を信じて、さっそく見に行こうと思う、明日からの写真展。



よっちゃんが見せてくれた写真絵本は、

たくさんのふしぎ ・・・「春をさがして 」っていう本で、


最近、大竹さんからきたメールに書いてあった写真展は、

明日から、学芸大学の喫茶店で、開催。