不要だった物 =本
カヌーにまで本を持ち込んだのですが、読んでいるゆとりはありませんでした。 本を読むよりももっと充実した時間を過ごせることはたくさんありました。
あると便利だと思った物 =水鉄砲
川が穏やかなときは、他のカヌーから水鉄砲攻撃がきました。 私は持っていくのを忘れてしまったのですが、探検隊の旅行では必要なようです。
~「ユーコンカヌーキャンプ」 参加者スチュワートの感想より
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ホワイトホースの空港で彼を出迎えたときは、一瞬、えー!?と思ったんだ。翌日から、原野でカヌーの旅をするというのに、きっちりしたジャケット姿、手には難しげな本を抱え、笑顔を見せるのは損、っていうくらい固い顔で、スーツケースをガラガラ引っ張りながら現れた彼。出張にやってきたビジネスマン、っといった風情で、硬い態度を崩そうとはしなかった。
翌日も、みんなで釣り竿などをワイワイ買うなか、彼はひとり店の入り口で本を読みふけったりしていて、私のヘラヘラした馬鹿なおしゃべりには、「とてもついていけないね」って顔で、距離を遠くから眺めていた。
カヌー旅には、ひとり70Lの防水袋が渡される。寝袋やちょっとした着替えを入れると、かなりギューギューになるから、何を持っていくか、何を置いていくか、っていう選択は、なかなか重要だ。そのなかで、あえて本をチョイスしていたスチュワート。
でも。
彼が本を出しているのをみたのは、初日1日きりだった。
一緒に、ユーコンの森を感じながらカヌーを漕いでいたら、いつのまにか、溢れるような笑顔になっていた。4杯もご飯食べたり、ラジオ体操したり、釣り糸絡ませたり、水鉄砲打たれるがままになったり、多分、久しぶりにこんなに無邪気に笑ってるんじゃないかな、って思うくらいに、素敵な笑顔を見せていた。
東京に帰って、およそ2ヶ月ぶりに再会した彼は、大手町に勤務するやり手ビジネスマンらしく、きっちりしたスーツ姿だったけど、顔は、ユーコンで見せたコドモのような笑顔そのままで、
それが何だかすごく嬉しかった。