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今週末から、しばらく日本を離れるので(・・・また!?とつぶやいた画面の前のあなた・・・はい。また、です。しかもアラスカで!ユーコンで!スミマセン)、前倒しになった仕事が、机に20センチも積み上げられている。頭イタイ。このいつもの、「1週間X24時間、ギリギリ走り続けて目眩しながら」駆け込む飛行機の座席が、今は恋しい。飛行機のドアが閉まる瞬間、久し振りの深い眠りが訪れる。


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で、次の旅に出る前に、8月の氷河キャンプ旅で、もうひとつだけ書きとどめておきたいのが、シャーンの話。


シャーン。飛ぶか飛ばないか分からないセスナで30分、無機質な氷河のまっただなかで、客を迎えながら夏を過ごす、私と同い年のカナダ人女性。


お父さんが、ここの氷河までを行き来するセスナの(つまり、超優秀な)パイロットで、夫は、下のベースキャンプで事務仕事をしている。5歳になる娘も、下でお留守番。氷河の上での、安全管理、登山ガイド、コック・・・を全てこなすスーパー女性だが、見るからに強そうでゴッツイ人ではなく、笑顔のキュートな、やわらかい雰囲気をもつ女性だ。


「旦那がいて、子供がいて、こんな仕事するんだ~」って、一緒にいた(日本人の他の)参加者は、みんなびっくりしていた。


でもね、

氷河テントのキッチンには、子供が描いた写真が貼ってあったし、毎日下界と行う無線連絡の合間には、子供に「今日はママは雪だるま作ったわよー。あなたは何して遊んだ?」って、必ずコミュニケーション取っていたよ。


日本じゃ、たしかに、超レアなケースだろうけど・・・。ユーコンという大地にたくさんいる、ちっぽけな常識にとらわれない、大きな器の人間たちには、それほど、ヘンな訳でもなさそう。



そんなシャーンが、吹雪でテントに閉じこめられた、ユルリとした午後のひととき、ノートに、「これからの旅の計画」を、そして「買うものリスト」を書いていた。



メキシコ-11月
南極-1月
バフィン島-4月
カムチャッカ-6月
ローガン-5月


(注:バフィン島は、北極圏にあるカナダの北の島。ローガンは、デナリよりよっぽど難易度の高いカナダの最高峰)


「メキシコは、家族旅行でしょー。子供にスペイン語のクラス受けさせたいの。南極とバフィンとカムチャッカは、仕事のオファーが来ていて、どれも行きたい場所なんだよなー。でも、旦那がどういうか・・・微妙・・・。あ、でもカムチャッカは1週間だし、大丈夫よね。よし、行こう。 あ、そうそう、来年こそ、ローガンに登りたい。すると5月か・・・。


ちょっと全部は難しいかなー、でもやりたいなぁ・・・。多分やっちゃうだろうなー。


となると、下に降りて買うのは、patagoniaのソフトシェルでしょう、新しいバックパックでしょう、それから・・・」




1年間での旅行計画先がスゴイし、

その半分は、仕事で、っていうのもスゴイし、

夫と子供がいる、というのが、何よりスゴイ。


私もたいがい「非常識」に飛び待っているのは自覚しているけど、彼女をみていたら、あ、子供がいても、同じなんだー。子供がいるからといって、どこにも行けなくなるって勝手に決めつけていたのは、私だったんだなあ・・・と、静かに自分で勝手に課していた枠を、取り払うことができた。


Sian。

たくましく強く可愛らしく美しい、ユーコン女性がここに一人。


出会えてよかった。




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