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イギリスからお客様がきた。

大切な相手なので接待しなくては、という名目のもと、オフィスを抜ける土曜日。決して、私が山に行きたいからという理由ではない。えへへ。


1日前に梅雨に入った土曜日は、奇跡的に晴れてくれた。


天気も大丈夫となれば、

目指す先は富士山。

富士山をみるための展望台に登らなきゃ。


というわけで訪れた、静岡の「越前岳」。1時間半のハイキングののち、頂上から見た富士は、3776mのテッペンから、太平洋までユルユルと続く裾野への山が描くラインが美しかった。


***


旅先の親切は、ペイ・フォワード。


外国では、

今まで何度、

すれ違う人たちから、無償の親切をうけてきたことだろう。


バーで偶然隣に座った人が夕食に呼んでくれた夜の団欒。

ガイドブックには書いていない、地元の人だけが知る州立公園の山頂の静けさ。

準備は全部地元の人にお任せだった、カナディアンロッキー山奥でのキャンプ。


そうやって過ごした時間、そうやって連れて行ってもらった場所の美しさ。


外国に住む彼らに、直接恩返しはできないけれど、日本にきたお客様が、ちょっとでも、いい記憶を残して帰ってほしいから。逆の立場にいるときは、無理をしない程度に、ホスト役は引き受けたい。


***


「ねえ、裸で入るのはちょっと恥ずかしいよ・・・」

「え、その赤い水着着る方が、よっぽど恥ずかしいんだよ」


初めて経験する露天風呂は、最後まで「裸」に抵抗して、水着を握りしめていたけれど、結局、私より20分も長風呂して、真っ赤にのぼせて出てきた彼だった。


温泉も気に入ってもらえて、よかったー。