0323-5


満月まであと3日、って月が、


こんなにも夜の世界を明るくしてくれるなんて。


凍った池は青白く光っていた。


嬉しくて嬉しくて、


この景色を独り占めしている贅沢さに気が遠くなりそうで、


池の上で、ひとりワルツを踊った。


遠くに連なるチュガッチ山脈が、やっぱり青白く光りながら、踊る私を見守ってくれていた。



どこか有名な山頂に立ったわけじゃなし、


有名な国立公園ってわけでもないし、


オーロラが舞っているわけでもないし、


日本のガイドブックには一生載らないような、平凡な場所かもしれないけど、


でも、


この日、ここで見た風景、

キーンと凍てつく空気、

圧倒される静けさ、

濃密なゆっくりと過ぎゆく時間、


私の記憶には、一生残るであろう、卒倒しそうなくらい美しい夜だった。



そして、


池のほとりでは、


焚き火を囲んで、赤く照らされたMattとMasa兄が、


笑いながら、踊る私を見守ってくれていた。



0323-6



チュガッチ山脈の麓で、バックカントリーキャンプの夜。


思い出すと、今でも涙がでてくるような、


そんな風景に、あと何回出会えるだろう。