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サンタクロースにもらった新しいデジカメ(CANON EOS-20D)を意気揚々とぶらさげてでかけたものの、デジカメだと、すぐ消せるからとつい気軽に撮ってしまい、結果、魂入らない写真ばっかりで、がっかり気味の私です。こんにちは。今日は、砂漠の案内人のお話です。


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Betty & Rusty は、フェニックスの近くにあるカウボーイ牧場。


観光客用につくられた牧場、じゃなくて、本当の牧場が、今は観光客用に開放されている、という順序での、カウボーイ牧場。


日本の感覚で、ツアーで訪れたら、怒られそうに観光客ずれしてなくて素朴なんだけど、その素朴さと、Betty&Rustyの暖かさとホスピタリティが、逆に心地いい。


その日、デスバレーから、700キロの長い長い道のりを丸一日ドライブしてようやく到着した私たちに、しっかりものの女主人Bettyは、温かい手を差し伸べて、「こんにちは。ようこそ。ベティです。よろしく。あなたのお名前は?」と聞いて、耳に馴染まないであろう日本人の名前を復唱して、出迎えてくれた。一人一人、全員に。


飄々と生きるRusty爺さんは、横に立っている300歳のサボテンと同じくらい生きてるんじゃないかって思わせる爺さんなんだけど、まだ現役で乗馬のガイドをしている。「俺は生まれたときからカウボーイだからね。そりゃ馬から降りることはないさ。おまえも、このままここに残るかい?ふぁっふぁっふあっ!」と、しわくちゃの顔で笑う。しょっちゅう冗談ばっかり言っては、Bettyにたしなめられている。


炭火でじっくり焼けた巨大なステーキと、ダッチオーブンでじんわり火の通ったじゃがいもの、「アメリカンっぽい!」とにんまりしてしまうようなメニューの夕食をいただいた後、私たちは、火を囲んで丸くなる。


グループがくると、お酒飲んで大パーティになることも多いらしいけれど、私たちは11時間のドライブで疲れていたし、静かに、彼らのカウボーイソングに耳を傾けた。多くのカウボーイソングは、楽譜では残っていなくて、口承で伝わってきたから、こういうふうに、キャンプをしないと聞けない歌も沢山あるのよ、と説明しながら、焚き火の赤い火の向こうで、Bettyが、優しくギターの弦を鳴らしていく。


疲れた誰かがこっくりし始め、
他の誰かは鼻歌でギターの音を拾い、
その横では、全部が天の川なのかっていうくらいの、あんまりな星空に、ぽかんと口を開けて上を見上げている人もいる。


1世紀前のカウボーイたちも、こんな風に、火を囲んで、コーヒーを飲みながら、くつろいで、歌を歌って夜をすごしたのかな、って、アメリカの歴史がちょっとだけ肌で感じられる瞬間。


その土地を好きになるには、ガイドブックじゃなく、自分だけじゃなく、その土地に住む、その土地を愛する人の媒介が絶対に必要で、ここ南アリゾナのサボテン砂漠では、Betty & Rusty が、その媒介者だ。10年前に、初めて出会ってからずっと、彼らはサボテンと一緒に私の心にいた。今日、久々の再会。


この日は牧場に1泊することになっていたが、冬の短い日はすでに沈んでしまい、辺りは真っ暗。我々は、テントを張ることを早々に放棄して、幌馬車や、小屋を、気の向くままにその日の寝床にしていた。キャンプが初めてのメンバーも、もう、「顔洗うお湯はないの~?」なんて野暮なことは口にしない。それよりも、この大地を独り占めするほうが贅沢じゃない?って気づいてくれたんだね・・・。


で、私は、星空を見ながら寝たいから、ちょっと寒いけど・・・一番の特等席、トレックバンの上。地平線からニョキニョキ突き出たサボテンのシルエットが、今日のスペシャル小道具。さっきのちょっと物悲しいカウボーイソングを思い出しながら、今日の夢は、ソノラ砂漠を馬で颯爽する自分にちがいない。おやすみなさい~。


もらった案内チラシのなかで思わずニンマリした、大好きな一文。


ベティ牧場
営業時間:日出から日入まで。


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Betty & Rustyのカウボーイキャンプ・・・、彼らに会いにいくには、トレックアメリカのツアー に参加するのがいちばん!(ちょっと営業)