whattobring


<1ヶ月に必要な服(着ているものも含めて)>


(下半身)

ソックス4ペア

雨具

ウインドパンツ

ポリプロ・長ズボン

ハイキング用短パン

下着1-2ペア


(上半身)

フリース

雨具

ウインドシャツ

ポリプロ・長袖シャツ

ポリプロ・半袖Tシャツ


(頭)

毛糸の帽子

ベースボール・キャップ

蚊除けネット


===


「これだけ?これだけですか? 着替えは?」


石ころ・トイレットペーパー問題に加え、出発前に不安だったもう一つの大きな要素は、「着替えない」(風呂に入らない)だった。風呂がない旅は初めてじゃあないが、いくらなんでも1ヶ月っていうのは、風呂好きの日本人として、女として・・・いやいや、文化的人間として、どうなんだろう?


出発前、去年参加したヨシ姉 に聞くと、

「大丈夫よー。そんな小さなことは、どうでもよくなってくるから」

と、答えにならない答え。


出発当日、インストラクターに聞くと、

「僕はねぇ、ソックスは、4ペアじゃなくて3ペアでいいと思うんだよね。人は知らないけれど、僕の場合は、一回も着替えないよ。面倒だから」

と、さらに荷物を減らされそうな答え。


全然参考にならない二人の回答で、さらに不安が増したため、石鹸は(自然への負荷が大きいので)使わないにしても、せめて川で洗濯しよう、と、こっそり、肌につく服・下着は、1ペアずつ予備を持っていった。


数百グラムの重さの負担より、清潔を取るぞ、私は。



***


1ヶ月後の結論。

洗濯も、予備の服もいらないな。


***


フロントカントリーの常識は、バックカントリーでは非常識だ。


フロントカントリーの余韻が残る・・・つまり、シャンプーと石鹸の匂いが、まだ体と服に残る、出発3日目までは、まだ、風呂に入れないことは、不快きわまりなかった。


が、日々、シャンプーの香りがなくなり、(たぶん)野生の匂いに戻るのと比例して、食べることと歩くことと寝ることで、ほぼ頭のなかは精一杯になってくると、不思議と、「きれいだ、きれいじゃない」という観点は、どうでもよくなってくる。


それよりも、今日1日、快適に生きていくためには、服が、「きれいか」じゃなくて、「乾いているか」の方が、よっぽど重要だった。


休息日に、洗濯する機会は何度かあった。が、川でピシャピシャ洗っても、石鹸が使えない以上、汚れに汚れた服が、元通りになる訳でもなく、ただの気休めにすぎない気がした。それよりも、服を濡らしてしまって、翌日までに「乾かない」状態になる方が、ずっと嫌だった。


アラスカの天気は、1日に30回くらい変わる。今、太陽がギラギラと照っていて夏のビーチのようでも、10分後には、雷雨がやってきて、寒々しく風が吹きまくる場所なのだ。そんな気まぐれな太陽を信じて、みすみす、この乾いた服を濡らすなんて、大馬鹿ものだ。


濡れた服というものは、第一に不快だし、体温がどんどん奪われて寒くなり、危険だ。


日中、川を渡って濡らした靴と靴下、雨の中を歩いて湿った服を、翌日までに、どう乾かすか、が、毎日の重要な課題だった。気まぐれな太陽に、少しでも当ててみる。夜、テントの中に干す。寝袋とマットの間に入れ、体温を使う。そうか、一番の乾燥機は、体温か。それならば、少し不快ではあっても、それを着て寝てみる。毎晩、毎晩、トライ&エラーの繰り返しで、私も皆も、「ドライ道」への階段を上がっていった。



そうして、「着替えない」生活を受け入れると、不思議なことに、蚊が、やってこなくなる。3日目まで、清潔が気になる頃までは、蚊除けネットと虫除けスプレーは、必須だったはずなのに。いつのまにか、使わなくなっていた。蚊がいないわけではないので、蚊に慣れたという以上に、多分・・・、寄ってこなくなったのだ。最初ほどには。


シャンプー、石鹸、歯磨き・・・、匂いのつくものは、クマを魅了してしまうため、テント内に入れないというのは、アラスカキャンプの基本だが。蚊も、人工の匂いが好きなのかなー。



そんなこんなで、野生の匂いに戻っていたであろう1ヶ月間の後遺症は、今、東京の人混みに混じると、くさくて我慢できない。電車のなか、エレベータのなか、全部(人工の匂いで)くさい。そして、自分自身も、パフュームが、つけられなくなってしまった。香水好きだったはずなのになー。何でだろう。


***

あんまり、こんなこと書くと、引かれてしまうので、最後に、女性らしい部分も加えておこう。


風呂には、入った。

最高に、気持ちのよい、水風呂へ。


少しだけ太陽が顔をだしていた休息日、女性全員、すっぽんぽん、全裸になって、推定水温10度以下の川に飛び込んだ。(残念ながら写真ないなー)。心臓止まりそうに、気持ちよかった。


そして、歩いている途中、小川を見つけると、水に頭をつっこんで、頭を洗ったっけ。



wash!




そうそう。

バックパッキングの旅のハイライトは、旅を終え、ひっさびさのシャワーを浴びることにこそ、あると思う。


1ヶ月ぶりの温水シャワー、シャンプー、泡立つ石鹸。

あれほど気持ちの良い瞬間は、他に、知らない。