mapread


(地図読みの章、前回 よりの続き)



弱音を吐いた数日後、私はみごと復活し、メンバーとともに、「どこにいくかは自分で決める」この方式を楽しんでいた。(ははは、立ち直り早い。)


慣れてみれば、こんなに楽しいことはない。目の前全部が道なのだ。どこを通ったって、誰にも文句は言われない。間違った場所を通れば、苦労するのは自分だけれど。


「道がない」自由を知ってしまうと、地球が広がる。どこだって、地図さえきちんと読めれば、私は迷わず進めるのだ。アラスカには、道路と呼べるものはほんの数本しかないけれど、そこから先にだって、私は、どこにだって、進んでいけるじゃん。すごい!


と、我々が自信を深めていくのと反比例するように、最初は先頭に立っていたインストラクターは、徐々に存在感を消していった。10日も経つと、生徒とは同行せず、先に出発してしまう。(もちろん、そのための危機管理は、イヤというほどに行っているけれど。この話は長いので、ここでは省略)


代わりに、生徒が交代で、その日のリーダー、LOD(Leader Of the Day・表の呼び方)(Loser of the Day・裏での呼び方。)となって、みんなを取りまとめる。その日一緒となったメンバー4人で、知恵を出し合い、一番歩きやすくて、迷わなさそうで、遠回りにならなそうな行路を決めていく。



そう、山歩き超初心者の人が、10日後に、道なき場所を、自分でナビゲートできるようになっている。自分が地図読みに自信をもてたのは嬉しかったが、それよりも、超初心者を、短期間でここまで育て上げる、NOLSのプログラムのありかたに、舌を巻いた。


***


ところで。


「アラスカのツンドラを歩く」って、どんなイメージ?



tundra


広い大地を、ムースやカリブーを地平線に探しながら、わすれな草やブルーベリーを足下に、氷河を遠くの山に見て歩く、こんな桃源郷??




ブーーーーー。

 ブーーーーーー。


甘いね。


地球温暖化、恐るべし。

50年前にはツンドラ地帯だった(地図上では、ツンドラとなっている)この場所は、今は、こう。



schwack

背の高さ以上ある、ウイロー。藪。藪。藪。草むらと化していた。


ふっふっふ。現実は、厳しいのだ。道を開いていくというのは、この、どこにも進んでいけそうもない、密集した藪のなかへ、意を決して突撃していく、ということなのだ。せっかく新調した、patagoniaのウールのシャツが、枝にひっかかりすぎて、ボロボロになるほどに、厳しい道なのだ。


自由とは、イバラの道だ。

これは、何かの比喩じゃなくて、人生論を述べているわけではなくて、本当に、イバラなのだよ。



それでも何だか、この藪漕ぎ、ブッシュワッキングが嫌いじゃなかったのは、この憎らしい草むらが突如消え、



moose


こうやって、桃源郷が現れるから、なんだな。