TP


「バラの花びらは、

詩人にとっては美しく、

虫にとっては食べ物で、

クジラにとっては意味なきもの」

マチウ・リカール



では、この、丸い河原の石は?


河原の石は、

遊びにきた親子にとっては投げる対象、

地質学者にとっては研究の対象で、


自然にインパクトなくキャンプする我々NOLSの生徒にとっては、

お尻に優しいトイレットペーパー。



***


この学校のキャンプでは、基本的にトイレットペーパー使用が禁止されている。どうしても必要なら、「全部自分で持ち帰り」を条件として持たせてくれるが、使わない、が原則。


ペーパーが自然に還るのには、あまりに長い時間がかかるし、埋めても動物がすぐに見つけて掘り出してしまう。焚き火も自然へのインパクト大きいのでよろしくないから、燃やせるわけでもない。紙の利用は、自然に優しくない、というのが、この根拠だ。(→ www.lnt.org  )



これを読んでいる文明社会に住む文明人の方々は、「えっっ、トイレットペーパーを使わない?何言ってるの?」と反応しているであろうし、野蛮人扱いされそうでイヤなので予め断っておくが、


最初に自分がこの話を聞いたときも、「ええええええええっっっっっっっっっっっっっっっ。無理、無理、無理!!それはいくら何でも、ハードコアすぎでしょう。」と拒絶反応を示した。


が、実際のところ、埋めるのも、燃やすのも禁じられている以上、使用済みトイレットペーパーを持ち歩くしか方法はなく、1ヶ月分ものゴミを持ち歩くのは、どう考えてもナンセンスなので、腹をくくるしかなかったのだ。




というわけで、初日にみっちり行われた、「正しいウンコのしかた」授業。


howtoshit

1.まず、水場とキャンプ場から、200FT以上離れましょう。


2.ここはクマのいる場所なので、ひとりで行ってはいけません。4人以上で、連れだっていくようにしてください。そう、連れウンコです。行きたくなったら、周りに声をかけること。夜中、トイレで目が覚めても、ひとりで行ってはいけません。クマに襲われたいですか?みんな仲間なのだから、これは助け合いです。


3.いい場所を決めましょう。決めたら、シャベルで、キャットホールを掘ります。そう、猫は、正しいやり方をすでに知っているのです。穴の深さは、6-8インチくらい。


4.この穴目がけて、用を足しましょう。


5.お尻を拭くのは、自然の恵みを利用しましょう。石、枝、松ぼっくり、苔、葉っぱ、雪。まわりを見渡せば、使える物はいろいろあります。世界の人口の半分は、トイレットペーパーなんて使っていないのですよ。


5.よくコンポストされるように、枝で十分にかき回し(この時点では、シャベルは使ってはいけません)、土をかぶせ、何もなかったかのように、地面をきれいに戻します。


6.サニタイザーで、きちんと手を洗いましょう。石けんを使う場合は、水場からやっぱり200FT以上離れるように。



***


驚いたことに、生徒全員が・・・、何でもこい!な男の子から、キャンプなんてほとんど初めて、という21歳のカワイイ女の子まで、嫌がらず、楽しそうに、このトイレ・システムを、すんなりと受け入れた。


最初の3日間、食事の後は、「何がトイレットペーパーに最適か」という議論が盛り上がっていた。人によって、良いと感じられる natural toilet paper は違うので、議論は白熱する。


授業中、天気についてのクイズ大会が開かれたときには、「ステアライズ(煮沸消毒)した、スムーズな石」が、景品として出されていた。


トイレ行く人ー!というかけ声は、数日後には、「D-train出発しまーす」という符号(D=dump)に入れ替わった。「この電車には切符はいらない。乗りたい人は誰でも乗れる~。シュッポッポー」(・・・ゴスペルに、こんな歌あったよね?)と、歌いながらトイレへでかける楽しい時間となっていた。



・・・と、思い返してみると、全然イヤな記憶になっていないのだ。みんなが、楽しんで、積極的に受け入れていた。そう、一度腹をくくってみれば、ツンドラの景色の中でのトイレというのは、意外にも快適で、ゴミも出ず、河原の石は、とてもお尻にも優しいのであった。


文明社会にいてこういう話をすると、どうしても信じられないけれど、実際にあの場所にいくと、大丈夫なもの。


こちらの世界の常識は、あちらの世界の非常識。



日本ではあまり「トイレのない場所」というのはないけれど、そんな機会が訪れたら、腹をくくって、ぜひ、試してみてください。


自然にローインパクトなキャンプを!


Leave No Trace トレーナーより。



Kathleen Meyer
How to Shit in the Woods