resupply


238キロ ÷ 15人 = 一人あたり16キロ の食糧は、一度には持って行けない。他に、テントやら寝袋やらストーブやら鍋やら防寒着やら教科書やら救急セットやら水やら、があって、すでに荷物は110Lのバックパックいっぱいなのだ。持って行けるのは、最初の1週間分。


で、週に一度、ブッシュパイロットがやって来て、次の1週間分の食糧と燃料を補給してくれる。


与えられる食糧は、毎日メニューが決まっているわけではない。3人一組に対し、1週間分の材料がまとめて渡されるので、その袋の中身をみて、何をいつ、どう調理して食べるか、1週間を計画的に過ごさないといけないのだ。


ところが、1日中動いているせいで、24時間お腹を空かせている私たち。食欲のままに食べ続けてしまうと、最後の1,2日は、めぼしい食べ物がなくなってしまう。


残っているのは、ドライオニオンと、アップルサイダーと、乾燥ビーンズが一袋、というような、絶望的な組み合わせで、あと1日を過ごさないといけないグループ。彼らは、他のグループから余った小麦粉をかき集めてつくった、味のないトルティーヤを囓り、ピーナツバターの容器に直接スプーンを突っ込みながら、この補給日を、飛行機の音がするのを、首を長くして待つ。


新しい食糧と、大リーグの最新の試合結果、そしてメンバーでない人間と話せる唯一の機会であるこの補給日は、正月と盆が一緒にやってきたくらいのハレの日で、パイロットは、まさにヒーローだった。「次の補給日re-rationまで、あと何日」、が、日付を数える正しい方法だった。


大歓迎を受け迎え入れられたパイロットから、世間と文明の臭いをかぎ終わると、早速、配給物資の仕分けにとりかかる。お腹空かせた人間の集まりゆえ、食べ物への不正は争いを招く原因だ。みんなが見守るなか、当番が慎重に、物資を仕分けする。


食糧が大量にあるこの日は、久々のごちそうだ。チーズクラッカー、ドライカレーライス、チョコレートブラウニーの、豪華3コースディナーを作り、今度の一週間は、もっと計画的な食糧計画をたてよう、と、誓うのだった。




・・・こんな生活を1ヶ月送った後遺症。

町に戻ってきて、お金を出せばどこでも何でもいつでも温かい食べ物が手に入る、飢えの心配をしなくていい、という状態に、なかなか慣れない。本気でお腹空くことがないこの状態を幸せに、でも、ちょっぴり、あの飢餓感を懐かしく、思う今。


(ごはんの章、まだまだつづく)




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