moyashi


ユーコン・カヌーの旅は、この土地を愛するガイドとの出会いの旅でもある。


去年に引き続き 、一緒に旅をしたのが、頑固なフランス男、フィリップ。去年よりも、一層、デザートの腕をあげ、去年よりも一層、ナチュラリストっぷりを増し、去年より容赦なく、私に冷たい水をかけて喜んでいた彼は、


時にスキーコーチで、時にカヌーガイドで、時にカーペンターな、典型的なユーコンの男、だ。



自然の中で多くの時間を過ごすガイドによくあるように、彼もまた、主義として、ベジタリアンを選択している。肉は、「野菜に比べて、口に入るまでに、たくさんのエネルギーを使うし、スーパーで買う肉というのは無理につくった人工的なものだし、大体、どこからどうやってきたか分からないから」、食べない。朝作るパンケーキは、「パンケーキの元なんて使っちゃだめだ。何が入っているか、分からないのだから」と、小麦粉とベーキングパウダーから、自分でつくりあげる。


そして極めつけは、「お手製・もやし箱」。カヌー旅という限られた荷物の中に、この「壊れ物注意」みたいな棚を、わざわざ持ってくる。ガイド中の忙しい時間のなかでも、毎朝、水を取り替え、麦やオーツのスプラウトを育てては、味噌をつけて食べていた。


「スプラウトはさ、栄養価が一番高いんだよ。モトは安く手にはいるし、それに、とても美味しいじゃないか」と、美しい笑顔で説明されると、おおそうか、と、そんな気がしてきて味見をするが、やっぱり、味気ないモヤシ以外の何者でもないのだ。


旅の途中、釣ったグレーリングは、彼が美味しく調理してくれる。メンバーが、その料理の腕を褒めると、「僕のおかげじゃないよ。魚自体が、おいしいんだよ。大切な命をありがとう、お魚さん」と、にっこり微笑むのは素敵だが、


お客さんが5日目にして、初めて釣り上げた、20cmになるかならないか、(←ユーコンの魚は、20cm以下はリリースが義務づけられている)の魚をみた瞬間、


「食べるのか食べないのか。食べないなら早く放せ。食べるなら(かわいそうだから)早く殺せ」と、殺気迫る顔でお客さんに押し迫り、「た、食べます」と、彼をオロオロさせてしまうあたりは、どうなんだろう。


しかも、その後で、「かわいそうなサカナよ・・・。顔が幸せそうに見えない・・・」なんてつぶやきながら肩をすくめる姿を、釣果に喜ぶお客さんに見られなくて、よかったよ・・・。




そんな彼の将来の夢は、「地球に負荷をかけないエコハウスを、自分の手で作ること」で、


今一番心を痛めているのは、「ユーコンは良い場所だけれど、他から遠すぎて、いろんな物資を遠くから運んでこなくてはいけない事実」だという。


「この夏はさ、4本もツアーをガイドして、ちょっと後悔してるんだ。一夏に4つが精一杯だな。もっと、家族と過ごす時間をもたないといけない」


と、カヌーを漕ぎながら話していたけれど、その4本目のツアーに滑り込むことができて、あなたと1週間、また一緒に旅することができて、よかったよ、フィリップ。



phillipe

▲「僕はね、川の上の静かな時間が好きなんだよ」



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この夏、2ヶ月原野にいて、こういう人種とつきあって、NOLSみたいな学校の価値観を植え付けられると、単純な私は、カンタンに影響される。

何でも、お金出して出来合の物を買わずとも、原料から自分でつくれるんだ、ってことに、改めて気づいたし、肉は、(なくてもいとは言わないが)そんなに無理して食べる必要はないし、畑から取れたばかりの野菜は、とても味が濃く、美味しい。


温暖化やら、地球環境をグローバルに考える、って、イコール、身近な日常生活を少しずつ変えていく、ってことなんだ、な。



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と気づいた私は、同じような視点をもつ仲間たちと、日常生活をちょっと変えるきっかけイベントをやることにしました。参加者、募集。


10/13-14 森の遊びとスローフード 2007秋




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お知らせふたつ


1.今週土曜日(22日)の「世界不思議発見」は、北極圏が特集だよ


2.10月13-14に、心と体をリフレッシュする第二弾企画やります。 トレランのかわちょ。ダッチオーブンのじんちゃん。ヨガの将軍。そして何もしない、私。ダッチオーブンでデザート作れるようになって、来年のユーコン・カヌー・キャンプで人気者になりたい方、大募集。


applepie

(フィリップとの旅は、フランス料理パティシエとの旅でもあった。ダッチオーブンで焼き上げる、クッキー、ブラウニー、アップルパイ・・・毎日デザート食べ過ぎた)