「オーロラもオオカミの遠吠えも体験できたけど、結局、滞在中に、カリブーは一頭も出ませんでした。」


オールドクロウまで、「カリブーの季節移動を見る」旅の添乗にでかけた友から、「お客さんに、あの光景を見せてあげることができなくて、残念だった」との報告が。張り切っていた姿を知っているだけに、その無念さが文面から伝わってくる。ああ、残念だったね・・・。


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でもね。


私たちは、自然を相手にする限り、「思っている景色」がそのまま現れるわけがない、という覚悟で、腹くくって、仕事している。たった数日の滞在で、自然界は、こちらが希望するような姿を、出してくれるわけがない。


厳しいけれど、この前提は、きちっと参加するお客さんに理解してもらわないと。


「絶対に」何かをみたいなら、動物園にいけばいいのだ。キャンプじゃなくてホテル泊でもいいし、雨を避けるためにバスの中から、車窓観光するだけのツアーだって作れる。または、数ヶ月という期間を費やせば、確率は上がるだろう。こちらが決めた日程ピンポントで、そんなに都合よく、


降るようなオーロラが見られたり

クマの親子がワサワサでてきたり

紅葉の最盛期に出会えたり

毎日雲一つない青空だったり

遠くの山脈がきれいに見えたり

パンクなしで1000キロの未舗装道を走ってくれたり


(してくれれば、それはとても嬉しいけれど)、しないことも、少なからず、ある。もちろん、統計は取って、一番確率が上がる日程を組む努力はしていても、だ。


安くないお金を出して、見られないかもいれない野生動物を追いかけ、マイナス30度のなかオーロラを待ち、土砂降りの中歩き続ける覚悟をしていてね、・・・なんて、すごく酷い商売みたいだけれど、


でも、もし、期待するものが出てこなくても、「ああ、行ってよかった」と感じられるような体験ができると信じているからこそ、(胃が痛くなりつつも、)こんな難しい旅を提案してしまうのだろう。


そのときは大変でも、後から思い出せば、ああ、あんなトラブルがあったからこそ楽しかったね、ってことは多いし、メインだったものが出てこなかったからこそ、出会える光景というのは、絶対にあるはずだ。



だから、こんな旅に参加する際は、出会いたい光景に胸ふくらませつつ、でも、一度気持ちを真っ白に戻して参加してください。何がおこっても、おこらなくても、柔軟な気持ちで受け止め、笑い飛ばし、そして、目の前にある光景を、素直な視線で味わってみてください。


High risk, High return、かな。ちょっと違うかー。

厳しい条件だからこそ、だからこそ、出会える光景・経験は、あるはずです。




▼今日の写真は、2日間続いたブリザード+嵐の後に出会った虹。久々に、臭くて狭いテントの外に出て喜ぶテントメイトと私。あの嬉しさは、毎日晴れていたら、とても味わえない、大切な、想い出。


rainbow in the mountain