makingfire


犬橇マッシャーファミリーとの夕食中、「キャンプの最中、火をおこすのがどうも苦手だ」とポロっとこぼしたら、「あーら、そんなの簡単よ。誰にでもできるわ。マッチは1本あればいい。アラスカ人なら、誰でもできること」と、パットが言う。「コツを伝授してあげる」、と、翌朝、急遽、火付け教室を開催。


まずは、林に入って、木を集めるところから。


「最初は、バーチ(白樺)の、皮を集めて。人間にとって垢を落とすようなものだから、ピロピロ剥いていいのよ。これが、着火材にとてもいいの」


「次は、デッド・スプルース(とうひ)の小枝。死んでいる木は、パキン、って音がするでしょう」


「ダイヤモンド・ウィロー(柳)も使えるわねー」


「生きている木はダメよ。煙くてしかたないから。でも、山の中で遭難してSOSを呼ぶときは、わざと使うこともあるけれどね」


「集めてきた木は、ログハウスみたいに交互に組み立ててね。あんまりギューギュー押し込めると、火が窒息しちゃう。」


と、レクチャーとともにバキバキ集めてきた枝で、火をつけて。

本当に、マッチ一本ですぐに火がついた。


これで凍った湖のなかに転落しても、命助かるでしょう。アラスカ人の第一段階合格!とパットは笑いながら言ってくれたが・・・。「私には、自然のなかでサバイブできる力はひとつも持ってない」と、まだグチグチ言う私に、彼女はこういって、慰めてくれた。


「私は大きな建物のなかで迷子になる。あなたみたいに、一人でバスに乗ることも怖くてできないわ。人は、生きているその地で必要な能力は身につけていくものなのよ」、と。



犬橇だけじゃない、アラスカ犬橇体験の醍醐味は、こんなひととき。