1227-6



1227-7



犬ぞりはなかなかにやっかいだ、という認識は、アラスカの犬ぞり体験で持っていた。


人を見るのだ。ガイド(ご主人)が操るときは、マジメに走る犬たちも、乗っているのが、さっき会ったばかりの、知らないヤツだとわかると、とたんに怠ける。「ねえ、止めていい?」と振り向く犬、喉かわいたもんねー、と雪を食べ始める犬。


それでも、アラスカでの犬ぞりは、とても利口に訓練されていて、まあ、バカにされつつも走ってくれていた。


ところが。


この冒険学校の犬たちは、もう少しワイルドだった。もっともっと、人を見る。つまり、もっともっと、思うように走ってくれない。


人間同士が初対面のときは、「どうも初めまして」と握手して名刺交換して自己紹介するように、犬と私も、最初は匂いを嗅がせて挨拶からスタートする。操る六頭の名前をしっかり覚え、彼らの性格も頭に叩き込むところから、始まった。


「犬は四歳児と一緒だから、正直に、しっかりと自分の気持ちを伝えること!」と教わるが、なかなかうまくいくものではない。日頃、犬に接して居らず、(好きではあるけれど)イマイチどう接していいか分からない私の気持ちは、勝手に犬に伝わっていたようで、最初は犬も「こいつ誰?」と、困惑気味だった。

ハップ!! オー! という掛け声は散々無視されつつ、何度かソリから振り落とされつつ、最後の最後にようやく、犬と私の気持ちが合致した。景色を楽しむ瞬間が、(ほんとに瞬間だったけど)あったりして、それを知ってしまうと、ああ、もっと時間をかけて、犬たちと通じ合いたいなあ、と欲が出る。・・・が、時間切れ。


言葉での命令だけじゃなく、犬は鋭い感受性で人を認識しているようで、相対峙するときは、ちょっと緊張。


大場満郎冒険学校・山形