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▲2004.9 カトマイ国立公園の川は、鮭だらけ。クマと人が、競って釣りしてた。




今いる会社で扱うツアーに参加するお客さんのほとんどは、アラスカといえば、


星野道夫、デナリ国立公園、マッキンリー、大自然、氷河、クマ、ムース、オーロラ・・・


といったキーワードで結びついているんじゃないだろうか。その、とんでもないであろう大自然を一目みたい、クマ見たい、氷河の青い色を見てみたい、というような動機で、アラスカに行くんじゃないかな。


どう?


***


アラスカに住むmasa兄が、「釣りロマン 」を見ろ見ろ見ろ見ろ見て感想を、と、この2週間、ことあるごとに、言い続けてた。自分がコーディネートした番組で、この「アラスカでキングサーモンを釣る」特集は、スタッフの姿勢がよかったので、きっといい作品になっている。見て感想をくれ、と。


普段テレビほとんど見ない私は、さらに興味のない「釣り」で、しかも「釣りロマン」って、だいたい名前からして、専門ニッチな香りプンプンするし・・・と、アラスカ、という場所を除いてはなんの興味もわかない番組に、1時間もつきあえないよなー、と内心思ってた。が、あまりのプッシュに、じゃ、まあ、と、録画していた番組を、さっき、ようやく見た。


番組冒頭のCMは、他では目にしない「釣り竿」「釣り糸」会社の宣伝ではじまり、おぉ、とその専門性に改めて驚きつつ、見始める。日本の釣り師が、リールのついていない特製釣り竿で、夢にみた巨大キングサーモンと一騎打ち、と、まとめてしまうと、ああ、という感じなのだが。


なんというか、羨ましかった。

この釣り師、細山さんが、少年のようなキラキラした目をして夢中になっている姿が。大げさなナレーションやBGMいれることなく、淡々とその姿だけを追っている番組なのに、いつのまにか、この釣り師と一緒になって息を止め、手に汗にぎって見入ってしまったよ・・・。釣りの世界なんて門外漢すぎる私が、気づけば1時間、見入っていた、不思議な番組。

さらに、ふーむ、と唸ったのは、

この釣り師にとってのアラスカは、「勝負するのに十分な大きさの鮭がいる場所」という認識でしかないんだろうなあ、という事実。彼にとっては、デナリ国立公園も氷河クルーズも、星野道夫が描いてきた世界も、なーーんにも関係なく、鮭なんだろうなあ、という事実が、ちょっと衝撃で、そして羨ましかった。彼の「釣り」という世界に、たまたまアラスカが絡まったであろう時間が。その時間は、彼がずっとコツコツ築き上げてきた技術とか情熱とかがあるからこそ訪れたもので、釣りにいけば誰にでも訪れるわけじゃないだろう、その凝縮された時間、が。


最近思うのは、何となく観光、じゃなくて、「自分が大好きな**をしたいから、でも**はその場所でしかできないから、その場所と時間と経験を求めてを旅をする」という形の旅って、もっと、濃くて、深い時間が待っている気がする。でも、その「大好きな**」は、簡単に手に入るものじゃない、んだなー。だから、誰にでも体験できるわけじゃない。



アラスカが、**の舞台になってくれたら、そのとき初めて、自分だけのアラスカ体験ができるんじゃないだろうか。と思う土曜日の夜中。