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「生きる気力の中心にあるのは、冒険への情熱です。生きる喜びは、あらたな体験との出会いから生まれます。したがって、たえず変化してやまない水平線をわがものにしているほど大きな喜びはありません。


・・・車での帰途、あなたはグランドキャニオンという、最高の景色のひとつを眺める、すばらしいチャンスに恵まれました。アメリカ人なら、一生に一度は見ておくべき景色です。だが、ぼくにはわからない、なんらかの理由で、あなたは家に真っ直ぐ帰ることばかり考えていました。来る日も来る日も、目にしている同じ場所へいっさんに。


これからも、こういう生き方をつづけて、そのために、神がぼくたちに発見させようとして周囲に配置してくれたすばらしいものを、あなたはなにひとつ発見できないのではないかと思います。


定住したり、一カ所に腰を落ち着けけたりしてはなりません。あちこち動き回り、放浪し、毎日毎日、水平線をあらたなものにしていくのです。人生の残り時間は、まだたっぷりあります。


・・・神は楽しみを、僕たちの周囲のあらゆるところに配してくれています。ありとあらゆること、なんにでも、僕たちは楽しみを見いだせるのです。


・・・あなたは、ただそこにじっと待っていて、それを掴もうとしているだけです。なすべきひことはただひとつ、自分でそれをつかみにいくことです。」


---「荒野へ」 ジョン・クラカワー