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太平洋のまんなかにぽっこり浮かぶ小さな島の、
北の端っこにある静かな静かなビーチで、

細かく温かく足を包み込んでくれる黒い砂と
絶え間なく続く波の音と
水平線から直線で真っ直ぐ届く、明け方の太陽光線を独り占めした日、

友人が、ヨガを教えてくれた。

見よう見まねで初めてやったヨガ。

堅い体をねじ曲げて見上げた指の先には、
緩やかにカーブを描く水平線とか、
太古から続く深い緑の丘がゆったりと横たわっており、

自分と地球が一体化した気分を味わった私は、その瞬間からヨガにはまった。

DVDを買い込み、
ヨガ教室に通うこと3ヶ月、

ギシギシと堅かった躯は、
ちょっとずつ、
ちょっとずつ、
でも認識できるくらいのスピードで柔らかくなっていき、

今では、
体を折り曲げたら、べったりと手のひらが地面につく。


・・・このまま続けていったら、
1年後には、中国雑伎団が私をスカウトにくるかも!


***

英語でキャンプでトレッキング、という、ちょっとスペシャルな感じの旅を紹介していると、参加しようかどうか、というお客さんは、最初は尻込みする。

「私は英語ができないから・・・」
「僕は普段運動していないから・・・」

と、考える前に諦めてしまう人もいるのだけれど、それは、もったいなさすぎだよ。

今でこそ、1年の半分以上、寝袋生活をしていて、周りからは「体力派でアウトドア派」と思われがちな私だが、たった2年前は、7年ぶりにするキャンプにびびって、「げー、最近、リゾートホテルばっかりで、体鈍ってるからなー。テントに寝袋なんて、寝心地悪くて眠れなかったらどうしよう・・・体力心配・・・。」ってことを、本気で考えていた。


人間って、環境に合わせて、結構カンタンに変わっていく。だから、「ちょっとハードル高いかも」と思っても、その時点で諦めないでください。目標に向かって、1ヶ月でも2ヶ月でも努力したらいい。1ヶ月って期間は、短くない。真剣にやればやるほど、「大変だ」と思っていたそのハードルはどんどん低くなっていく。

***


旅を通して、何かに気づいて、その後、精進している人たちを、たくさん間近に見ている。

一緒にゼロから始めたはずのロッククライミングにすっかりはまり、今では私なんて足下にも及ばないほど壁人間・スパイダーウーマンとなったみやっち にも感心するし、どこから見ても、「スポーツなんて縁遠い」と思わせるOLな風貌だった可憐なリエさんは、2年後、「トライアスロンよりハードな」アドベンチャーレースに出場して、優勝 している。

スタート地点が同じはずだった人たちが、どんどん次のステップへ進んでる。遠く見えるゴールも、まず最初の一歩を踏み出して、そのまま一歩一歩、少しずつ進んでいったら、いろんな「難しいこと」は、実はそんなに遠い世界じゃないんだね。

ただ・・・「休まずに進み続ける」ことが、実は意外に難しい。

私自身、最初の一歩、で終わっていることは沢山あるけれど。

終わっていないことも、少しだけど、ある。